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2021-06-09

プロダクトマネジメントは「クソどうでもいい仕事」か

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プロダクトマネージャー自身がその製品・事業・技術に対して強い熱意・使命感を持っていないのなら、それはおそらく真である—という話を "Hi Product Managers, Are You Creating Products That *You* Love?" で書いた。

Knowing how to build products that *customers* love won't be enough.

More importantly, building a product that *you* love should be the minimum qualification to be a PM, and the fact ultimately enables the product to be loved by customers.

Bullshit Jobs(クソどうでもいい仕事)を読んだ

あなたは『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』をもう読んだだろうか。

ブルシットジョブ。それは高給にも関わらず容易に置き換え可能で、世の中から無くなっても特に困らないような「クソどうでもいい仕事」を指す。そしてそのような仕事に従事している人間の多くはその事実を自認しており、内心こんな仕事は存在しない方がマシだと思っている。それでも、「生活のため」「家族を養うため」という建前の下にブルシットジョブを正当化し、今日も静かに無を生み出している。

本書はその半分以上をブルシットジョブの例示に使う徹底っぷりであり、読者は否が応でも「いま自分がやっていることはブルシットか?」という問題について考えさせられる。正直に言って、僕はこの問いに自信を持ってNOと答えられるだけの理由を持ち合わせていない。明日突然仕事を辞めたとして、一体誰が困るというのだろうか1

「なんだ、こういったモヤモヤを抱えているのは自分だけじゃなかったのか」それが本書を読んで最初に抱いた感想だ。パンデミックによって激変した世界の中で「今の自分の仕事を疑う」機会を得た我々にとって、ブルシットジョブとの対峙は極めて一般的かつ重要な課題であるように思う。

賃金と社会への貢献度の反比例な関係。消費によってのみ自己を表現し、生産(仕事)は消費を正当化するための手段でしかない現実。それに順応してしまっている事実から目を背けてはならない。だからこそ僕は今、”作ったもの”で胸を張って自己を表現できるような生き方を目指して、少しずつ行動変容を実践している2

プロダクトマネージャーとして最も大切なこと

「ブルシットジョブ」という考え方を得た上で自分の仕事を見つめ直すと、新しい発見がある。

早いものでプロダクトマネージャー(PM;ここでは一貫してソフトウェア製品におけるPMを指す)になってから1年以上が経過した。過去の記事で述べた「PMの仕事とは」という話は大筋でかなり正しかったという確信が未だにあって、今読み返してみても、我ながらよく書けていると思う。

しかし「ユーザ理解が〜」とか「プロダクトマーケットフィットが〜」とか言う以前に、根本的な視点を見落としていた。それは個人として圧倒的なオーナーシップ(当事者意識)を持つことの重要性。

世の中のPMに問いたい。「そのプロダクトを開発する上で、本当にあなたは必要なのか?」と。果たして、80点のプロダクトを作るためにPMが必要なのか、甚だ疑問である。

多くの場合、最終的に手を動かしてプロダクトを作るのはPMではない。そして、関係各位と必要最低限のコミュニケーション・調整を行い、無難な決断を下し、タスクを割り振って定期的に進捗を確認するだけなら、あなた以外にもできるひとは大勢いる。もっと言えば、ユーザリサーチャー、ビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャーなど、各仕事をより効果的にこなすプロフェッショナルは他に存在する。ならばPMよ、あなたはなぜそこにいる?

それは、80点ではダメで、100点、120点のモノをユーザに届けるためではないのか。

たとえば、ソフトウェアエンジニアが「自分が日常的に使っているサービスの開発業務をやりたいですか?」と聞かれても、その答えは必ずしもYESとは限らない3。プレイヤーとしてゲームが好きだからといって、ゲーム開発に携わるのが良いとは言い切れない。または、YouTube, Instagram, Twitter...なんでもいいが、ある特定のWebサービスのヘビーユーザーであるという事実と、そのサービスを作る側に回りたいという気持ちは別の問題だ。

一方でPMに関して言えば、「プロダクトと自分の間には、むしろ積極的に強固な繋がりを求めなければならない」というのが僕の仮説だ。「とにかく好き」「自分だからできる」「自分がやらねばならない」という情熱や使命感。それがあるからこそチームはPMを信頼し、確信を持って開発を進めることができ、顧客とのコミュニケーションが自然と促され、結果的に最高のプロダクトが生まれていくのではないか。

「PMに必要なスキルとは何か?」ソフトスキル、技術・ビジネス・経理・法務等に対する幅広い知見、顧客の理解・・・そういった表面的な話は枚挙にいとまがない。

pm-skill-stack

だが、そもそも圧倒的な熱量なくして、そこに至るまでのコミュニケーション、信頼構築、自らの判断に確信を得るための努力を惜しまずにできるだろうか。四六時中そのプロダクト・問題の事を考えずして、どうして顧客に愛されるプロダクトが作れようか。

改めて、「この組織でPMをやりたいか?」という問い

換言すれば、極めて個人的な理由・動機が根底にない限り、プロダクトマネジメントなんて誰にでも置き換え可能で、無くなっても困らない「クソどうでもいい仕事」ではないのか。

調べてみればわかることだが、一般的にPMは高給職であり、その額は往々にしてソフトウェアエンジニアよりも高い4。ではどうだろう。例えばあなたのチームのPMがデザイナーやエンジニアよりも高い給与をもらっていたとして、そのPMはあなたを納得させられるだけの働きをしているだろうか?そこに疑問や怒り、あるいは称賛が生まれず「80点でも100点でも知ったことではない。合理的に物事を進めてくれるPMならばそれで良い」というのであれば、それはPMのみならず周囲の人間、ひいては組織全体がブルシットであると言わざるを得ない。

ビジネスや仕事に私情・精神論を持ち込むというのは議論が分かれるところではあるが、プロダクトマネジメントとブルシットジョブの境界線はきっとそこにある、というのが今の僕の考えである。

PMとしての自分が置かれた環境というものが職務遂行において非常に重要な意味を持ってくる。[...]このあたりは一概に良し悪しを判断できるものではなく、だからこそ「自分はこの組織でPMをやりたいか?」という点が重要なのだ。

僕は「世界で闘うプロダクトマネージャー」にはなれない。

プロダクトマネジメントが「クソどうでもいい仕事」かどうか。全ては組織次第であり、その組織に属する「自分」次第である5

個人的に、ソフトウェアエンジニアとしてこの先数十年キャリアを積み重ねていくというのは、比較的容易に想像ができるシナリオだ6。しかしPMはそうではない。次のキャリアとして引き続きPMを選ぶ可能性はむしろ極めて低く、その仕事を「自分ごと」化できない限り、僕はその道を選ばないだろう。

なお、PMの情熱は必ずしも製品それ自体に対するものである必要はない。

たとえば、企業によっては"PM"とは別に"Technical PM"という役割が存在するように、製品の基盤となる技術それ自体に情熱を注ぐパターンもある。データベース、機械学習、分散処理、ストリーム処理・・・ある技術の熱狂的信者による仕事を「クソどうでもいい」と一蹴するのが許されて良いはずがない。あるいは、企業のビジョンそれ自体が動機となるパターンもあるかもしれない。「既存のソリューションやビジネスモデルはあまり筋が良いとは思えない。でもこの組織が解決しようとしている問題・見据えている未来には強く共感できる」というように。

いずれにせよ「そのPMの席はあなたでなければダメなのですか?」という問いにYESと答えられることが、「どうでもよくない」PMであるための必要条件ではなかろうか。

1. もちろん残された仕事を押し付けられる人が実務的に困るというのはあるが、それはあなたの仕事の価値とは無関係である。
2. この文脈における「作ったもの」、それは自分が意識的に放つ多様な「外向きの矢印」を包括しており、必ずしも物理的なアウトプットだけを指すものではない。
3. むしろ断固としてNOであるという人のほうが(自分を含め)周囲には多い印象である。みなさんはどうですか?
4. The highest paid workers in Silicon Valley are not software engineers
5. 「組織次第」だからこそ、本記事の僕の主張はたったひとつの組織での1年強の経験のみに基づいた「仮説」に過ぎないということは強調しておきたい。
6. 「粗雑なコードを修復するだけのエンジニア」など、そこにもブルシットジョブは存在するが。

  書いた人: たくち

たくちです。トレジャーデータでデータサイエンス・機械学習のプロダクト化および顧客への導入支援・コンサルティング、そして関連分野のエバンジェリズムを担っています。趣味は旅行、マラソン、登山。コーヒーとお酒とハンバーガーが好き。長野県出身。ブログへのご意見・ご感想、お仕事のご依頼など、@takuti または [email protected] までいつでもお気軽にご連絡ください。

※当サイト上での発言は個人の見解です

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