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2020-09-19

自己投資の大原則

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みなさん“投資”してますか?まだの方は『投資の大原則』を今すぐ読んで、どうぞ。

そう、低コストで継続的に長期分散投資。そして定期的にリバランス。これが原則。

え?おすすめは○○証券の××というインデックスファンド?それも興味深いけれど、今日は僕らの“時間という資産に対してどのようなポートフォリオを組んで投資するか、というお話。

きっかけは久しぶりに読み返していた『逆説のスタートアップ思考』の次の一節:

「人生にとって、もっとも大切な資産は時間」だとピーター・ティールが指摘するように、私たちは全員、自分の時間という資産の投資家です。(終章・逆説のキャリア思考)

この考え方に倣って『投資の大原則』を時間という資産に応用すると、どのようなことが言えそうか。

  • 低コストで「60点〜80点くらいを目指して、」
  • 継続的に「息切れしない程度に手を動かし続けて、」
  • 長期分散投資「多様な経験を得ることに時間を費やす。」
  • 定期的にリバランス「とはいえ選択と集中は大前提。易きに流れず、かつ発散しすぎないように、定期的に現状を見直す。」

なるほど、これは『"Deep Work"を読んだけど微妙だったから皆は"How to Write a Lot"と"エッセンシャル思考"を読めばいい』で書いたような生産性ノウハウにかなり近いものが導出できそうだ。もう少し掘り下げてみよう。

※以下、特に前置きのない限り“資産”=“時間”であるものとする。

資産を安全資産とリスク資産に分ける

まず、自己投資を考えたときの安全資産とはなにか?これは毎日の食事、睡眠、運動といったルーティーンと、自分の持っているスキルがそれなりに活きて生活を維持するに足る継続的な収入が期待できる仕事、あとは既に持ち合わせている趣味なんかが該当しそうだ。

そしてそれ以外の時間が投資元本・リスク資産となる。このとき注意したいのが、

  • 安全資産が本当に“安全”か?
  • 安全資産とリスク資産のバランスに納得できるか?

という点である。

食事、睡眠、運動が不規則であったり、いまの仕事に過度のストレスを抱えていたり、業務内容が明らかにマッチしていなかったり、組織がお先真っ暗な状況だったり・・・こういう場合はリスク資産に手を付けるよりも前に、確かな安全資産を確保することが重要だろう。投資を始めるには、まず収入の1/10だけでも蓄えに回せるように努める必要がある。そのためにも、安全資産については選択と集中による徹底的な最適化が求められる。

一方、リスク資産を新たなスキルを身につけるための勉強や新しい趣味に没頭することに投資するのは素晴らしいが、そのために睡眠時間を過剰に削ってしまったり、怪我をしたり体調を崩したり、それで本業に支障をきたしているのであれば安全資産とのバランスが不適切であると言わざるを得ない。

なお、創業初期のスタートアップでみんなが必死に働く・・・といったリスク資産極振りパターンもあるが、その投資の効用を最大化するためにも、食事、睡眠、運動からなる最低限の安全資産は死守すべきだと僕は思う。

仕事は誰にとっても楽しいものであるとは限らないし、日々惰性で業務をこなしていると虚無感に苛まれることもあるだろう。でも、それを安全資産だと割り切ってしまえばどうだろうか?やるべきことをプロとして着実にこなす。しかし頑張りすぎることはない。それで業務が破綻したりあなたの心が荒むのなら、それはもはや安全資産とは呼べない。

時間の低コスト長期分散投資

自分のリスク資産の大きさが明らかになったら、いよいよ投資を実行する。せっかく作った時間、これをたっぷりと働かせてリターンを得る。

原則に従って、ここでは分散投資を基本としよう。それはつまり「いろいろと経験してみる」ということである。

『逆説のスタートアップ思考』の終章では、リスク資産を使ってキャリアにランダム性を取り入れることの意義を説いている。既に得意で慣れ親しんだ特定の分野や、打算が働いて選択した一本の道を突き進むのはただのギャンブル。仮に成功を収めてもそれは局所最適解であり、より良い選択肢を見落としている可能性がある。加えて、今後の技術の進歩や世情の変化によって、その職業・業界そのものの価値が急落する未来も想像しなければならない。

ゆえに、唯一のベストな投資先をあれこれ思案するよりも先に一刻も早く分散投資を実行し、それを長期に渡って継続せよ。

僕がとある人から言われてずっと大切にしている考え方に『“専門性は経験からしか得られない』というものがある。

行動して初めて情熱が生まれるのであって、情熱があるから行動するわけではない—『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義

結局のところ、さっさと手を動かした人間が一番偉いのだ。確かに、それでは大きな成功は望めないかもしれない。それでも大多数の一般人にとっては、このほうが長期で見た時にずっと遠くまで行くことができるのではないだろうか。

ひとつの道を極めるわけではないから、コストも低く済む。あるスキルについて60点〜80点くらいの経験を積むのはさほど難しくないが、80点以上を取るのに必要な努力・時間は指数関数的に増加する。その事実を僕たちは経験的に知っているはずだ。

継続することの価値

人生山あり谷ありである。それは人間関係、世界情勢、健康状態、そして新型ウイルスの流行といった様々な要因に依存しており、一個人の努力ではどうしようもないことだってたくさんある。

それでも、今この瞬間に可能な限りの経験を積むことを継続する。そうすれば、上り調子だったときの経験は辛い時の支えになるし、辛いときにも歩みを止めなかったことがいずれ再浮上の原動力にもなる。

よりミクロな視点でみると、ひとつひとつの経験について「やってみたけど、これは合わなかったな(ネガティブ)」ということもあれば、「これは手応えアリ(ポジティブ)」な場合もあるだろう。しかしこれに一喜一憂しないこと。過去すべての失敗と成功の積み重ねが次の一歩を決める手がかりになる。そして複利効果によって、その精度は経験を積むほどにゆっくりと、それでも着実に向上していく。

自分の将来の成功なんて誰も保証してくれない。それでも、ドルコスト平均法は『継続は力なり』が真であること僕らに教えてくれる。

リバランスで可能性の種を蒔き続ける

人は易きに流れるものである。いまの仕事に満足して無意識のうちに保守的になって安全資産の割合が増えてしまっていたり、むしろ時間の浪費が続き安全資産を取り崩してしまっていたり、知らず識らずのうちにリスク資産での投資内容にも隔たりが生まれる。

だからといって神経質になって一分一秒を惜しんで日々の行動のすべてを記録する必要もない。

それでも年に一度ほど、定期的に安全資産とリスク資産の割合、そしてリスク資産内でのポートフォリオを見直してリバランスすることは有意義であろう。生活リズムを改善して仕事との向き合い方を見直したり、転職を検討したり、全く新しい趣味をはじめてみたり。

リバランスを怠ると『貯金を取り崩しながら生きている感覚』を察知することもなく、ゆるゆると心が死んでいってしまうかもしれない。

資産は有限、人生は短い

『投資の大原則』には、世の中の9割の一般人が大きな間違いを犯さずにお金という資産を正しく扱い、ゆっくりと着実に富を築き上げていくために必要な最低限の事実が記されている。

時間という資産においては、大きなリスクに賭けたい人(そしてその結果成功する人)の割合はもう少し多いかもしれない。また、時間投資におけるリターンとは時間以外の“何か”になるわけで、定量的には効用を測定し難い。

それでも、ふつうの成功を望む大多数の人々にとっては、やはり長期的な視点での着実な分散投資が原則であると言えるのではないだろうか。少なくとも僕は、そう考えてみることで心が幾分軽くなったような感覚がある。

生産性と時間の使い方に関する本は無数に存在する。今回『投資の大原則』と『逆説のスタートアップ思考』から導かれた「低コストで継続的に長期分散投資。そして定期的にリバランス。」という自己投資の考え方は、その多くを内包しうるのではなかろうか。時間という有限の資産を、“ふつう”に、“間違い無く”運用しよう。

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最終更新日: 2022-01-18

  書いた人: たくち

たくちです。長野県出身、カナダ・バンクーバー在住のソフトウェアエンジニア。これまでB2B/B2Cの各領域で、Web技術・データサイエンス・機械学習のプロダクト化および顧客への導入支援・コンサルティング、そして関連分野のエバンジェリズムに携わってきました。現在はフリーランスとして活動を続けつつ、アフリカ・マラウイにて1年間の国際ボランティアに従事中。詳しい経歴はレジュメ を参照ください。いろいろなまちを走って、時に自然と戯れながら、その時間その場所の「日常」を生きています。ご意見・ご感想およびお仕事のご相談は [email protected] まで。

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