近況

最終更新日: June 14, 2025

ここは僕個人の「Nowページ」です。ひさしぶりに会った友人に近況を報告するような心持ちで書かれており、気まぐれで不定期に更新されます。X(旧Twitter)をはじめとする各種SNSにはほぼ触れていないので、その代替として捉えていただければ。

視察のために1か月間滞在中の、南アフリカ・ケープタウンより

アフリカ南東、世界最貧国のひとつ・マラウイでの1年間にわたるフィールドワークが昨年7月に終了した。そこで目の当たりにしたのは、西側諸国でのトレンドをコピペしたような、付け焼き刃的で持続性のない国際開発の実態であった。現地のコンテクストに寄り添い、多様なステークホルダー間でのコミュニケーション (Communication)、調整 (Coordination)、協調 (Collaboration) を通して適応的にアプローチする「手触り感」のある取り組みが、極めて少ないのだ。環境、ジェンダー、紛争、貧困などは、比較的多くの人が具体例を伴って議論しやすいテーマであるようだ。一方で、ネットワーク、データ、AI、ロボティクス、ブロックチェーンといった情報技術に話が及んだ途端、皆が一様に「それは専門外だから・・・」とフリーズしてしまう。

これは本当にもったいないことだと、僕は思う。未来の世代にとって、テクノロジーと善き関係を築くことで拡がる可能性は計り知れない。しかしそこで情報技術がブラックボックスとして扱われてしまえば、目先の人的・金銭的リソースに対する多大な機会損失となる。事実、基本的な情報リテラシーの欠如や、意識改革・行動変容の難しさゆえに、社会からの期待に反して現場の生産性は恐ろしく低い。

そこで僕はいま、テクノロジーと社会のあいだでいち技術者として何ができるのかを再考している。そのための第一歩として、ニュースレター(メルマガ?)「Altruistic Byte」を立ち上げた。デジタル技術を“善い”かたちで普及・利活用するために何ができるのかを考えるための、事例集という建て付けだ。データ(ファクト)とストーリーに基づいて、より多くの人がデジタルトランスフォーメーション(DX)を「自分ごと」として語るようになってほしいと、切に願う。

コロナ禍以来ずっと、こんなふうに世の中のテクノロジーのあり方に「?(クエスチョンマーク)」を突きつけるべく日々を歩んできた。同時に、僕らの暮らしはどうしようもなくテクノロジーによって支えられていることもまた事実であり、だから僕は「NO」とは言わない。10年間ずっと、僕はインターネットが怖い。それでも、それを理解しようと努めないことのほうが、もっと怖い。

僕の拠点は引き続き、カナダ・バンクーバーだ。しかし先の問題意識のもとで現場重視の姿勢をとるにあたり、現在も多くの時間を国外で過ごしている。

とはいえ、過去2年間、マラウイという国には少し長居し過ぎてしまった。ある程度の職と資金がすでにあり、現地での良好な人間関係にも恵まれた「よそ者」にとって、この国での暮らしはあまりにも“容易い”。自分の立ち位置や国内の政治的・経済的な環境が一ミリも変わっていなくても(なんなら、後退していたとしても)、正直さほど困らない。

その感覚が、僕を不安にさせる。仮にこの先一年間マラウイに自分の時間と労力を投資し続けたとして、一年後の自分の姿がかなり鮮明にイメージできてしまうのだ。そのような環境で、いかにして現状に「?」を突きつけられようか。自分が恵まれているという事実を理解し、迷い、それでも動くことをやめず、世界の多面性・複雑さと正面から向き合ってこその「倫理」ではないのか。

というわけで、今は広くサハラ以南のアフリカ、日本、カナダ、そしてその周辺に目を向けて、潜在ニーズの発掘と、ビジネスやテクノロジー応用の実態調査に時間を費やしている。先のニュースレターを通して世界各地から事例を集めているのも、その一環だ。また、一連の活動に際して、コンサルティング、技術支援、執筆、講演など、さまざまな形でのパートナーシップを模索中。詳細はサービス一覧・問い合わせ窓口より。

未だ、この美しくも複雑な世界の一員として、考えるべき課題は尽きない。ゆえに、これからはもっと他者とのつながりのなかで「一緒に」考えることができれば、とも思う。これを読んでくださっているいるあなたも、まずは雑談から、いつでもお声がけください