近況

最終更新日: April 28, 2025

ここは僕個人の「Nowページ」です。ひさしぶりに会った友人に近況を報告するような心持ちで書かれており、気まぐれで不定期に更新されます。X(旧Twitter)をはじめとする各種SNSにはほぼ触れていないので、その代替として捉えていただければ。

アフリカの小国・マラウイは、北部・ムズズ市にて

アフリカ南東、世界最貧国のひとつ・マラウイでの1年間にわたるフィールドワークが7月に終了した。そこで目の当たりにしたのは、西側諸国でのトレンドをコピペしたような、付け焼き刃的で持続性のない国際開発の実態であった。現地のコンテクストを正しく理解し、多様なステークホルダー間でのコミュニケーション (Communication)、調整 (Coordination)、協調 (Collaboration) を通して適応的にアプローチする「手触り感」のある取り組みが、極めて少ないのだ。環境、ジェンダー、紛争、貧困などは、比較的多くの人が具体例を伴って議論しやすいテーマであるようだ。一方で、ネットワーク、データ、AI、ロボティクス、ブロックチェーンといった情報技術に話が及んだ途端、皆が一様に「それは専門外だから・・・」とフリーズしてしまう。

これは本当にもったいないことだと、僕は思う。未来の世代にとって、テクノロジーと善き関係を築くことで拡がる可能性は計り知れない。しかしそこで情報技術がブラックボックスとして扱われてしまえば、目先の人的・金銭的リソースに対する多大な機会損失となる。文化、地理、政治、経済、倫理的な配慮なき科学技術の普及および利活用は、単なる投機だ。

そこで僕はいま、テクノロジーと社会のあいだでいち技術者として何ができるのかを再考している。そのための第一歩として、ニュースレター(メルマガ?)「Altruistic Byte」を立ち上げた。デジタル技術を“善い”かたちで普及・利活用するために何ができるのかを考えるための、事例集という建て付けだ。

コロナ禍以来ずっと、こんなふうに世の中のテクノロジーのあり方に「?(クエスチョンマーク)」を突きつけるべく日々を歩んできた。同時に、僕らの暮らしはどうしようもなくテクノロジーによって支えられていることもまた事実であり、だから僕は「NO」とは言わない。10年間ずっと、僕はインターネットが怖い。それでも、それを理解しようと努めないことのほうが、もっと怖い。

僕の拠点は引き続き、カナダ・バンクーバーだ。しかし先の問題意識のもとで現場重視の姿勢をとるにあたり、2025年も多くの時間を国外で過ごすことになりそうだ。

とはいえ、過去2年弱、マラウイという国には少し長居し過ぎてしまった。ある程度の職と資金がすでにあり、現地での良好な人間関係にも恵まれた「よそ者」として過ごす分には、この国はあまりにも快適である。自分の立ち位置や国内の政治的・経済的な環境が一ミリも変わっていなくても(なんなら、後退していたとしても)、正直さほど困らない。

その感覚が、僕を不安にさせる。仮にこの先一年間マラウイに自分の時間と労力を投資し続けたとして、一年後の自分の姿がかなり鮮明にイメージできてしまうのだ。そのような環境で、いかにして現状に「?」を突きつけられようか。自分が恵まれているという事実を理解し、迷い、それでも動くことをやめず、世界の多面性・複雑さと正面から向き合ってこその「倫理」ではないのか。

というわけで、今は広くサハラ以南のアフリカ、日本、カナダ、そしてその周辺に目を向けて、潜在ニーズの発掘と、ビジネスやテクノロジー応用の実態調査に時間を費やしている。先のニュースレターを通して世界各地から事例を集めているのも、その一環だ。また、一連の活動に際して、コンサルティング、技術支援、執筆、講演など、さまざまな形でのパートナーシップを模索中。詳細はサービス一覧・問い合わせ窓口より。

振り返ると、2024年は随分とたくさん旅をした。ビジネスとプライベートをあわせて計19カ国を訪れ、52回飛行機に乗った:

2024-flights

しかし未だ、この美しくも複雑な世界の一員として、考えるべき課題は尽きない。

今年はもっと、他者とのつながりのなかで「一緒に」考えることができれば、とも思う。これを読んでくださっているいるあなたも、まずは雑談から、いつでもお声がけください