ここは僕個人の「Nowページ」です。ひさしぶりに会った友人に近況を報告するような心持ちで書かれており、気まぐれで不定期に更新されます。X(旧Twitter)をはじめとする各種SNSにはほぼ触れていないので、その代替として捉えていただければ。
カナダ・オンタリオ州、トロントのAirbnbにて。
アフリカ南東、世界最貧国のひとつ・マラウイでの1年間にわたるフィールドワークが7月に終了した。そこで目の当たりにしたのは、西側諸国でのトレンドをコピペしたような、付け焼き刃的で持続性のない国際開発の実態であった。現地のコンテクストを正しく理解し、多様なステークホルダー間でのコミュニケーション (Communication)、調整 (Coordination)、協調 (Collaboration) を通して適応的にアプローチする「手触り感」のある取り組みが、極めて少ないのだ。環境、ジェンダー、紛争、貧困などは、比較的多くの人が具体例を伴って議論しやすいテーマであるようだ。一方で、ネットワーク、データ、AI、ロボティクス、ブロックチェーンといった情報技術に話が及んだ途端、皆が一様に「それは専門外だから・・・」とフリーズしてしまう。
これは本当にもったいないことだと、僕は思う。未来の世代にとって、テクノロジーと善き関係を築くことで拡がる可能性は計り知れない。しかしそこで情報技術がブラックボックスとして扱われてしまえば、目先の人的・金銭的リソースに対する多大な機会損失となる。文化、地理、政治、経済、倫理的な配慮なき科学技術の普及および利活用は、単なる投機だ。
そこで僕はいま、テクノロジーと社会のあいだでいち技術者として何ができるのかを再考している。もっと言えば、フリーランスとして僕自身が目的・目標とするところ、ターゲット、そして物事の優先順位を、根底から再定義したい。搾取の構造の上に築き上げられる「Rich get richer」な資本の流れと、そこから遠からず近からず、微妙な立ち位置で展開される非営利団体・国際団体に依存した資源の非効率的な分配。その間にあるはずの、こと情報技術分野において未開拓な「すきま」を見つけたいのだ。そのための第一歩として、明日僕はここカナダの東海岸・トロントから、再びマラウイに飛ぶ。
このようにカナダを拠点としながらも現場重視の姿勢をとるにあたり、自身のライフスタイルを「デジタル・ノマド」的に一層洗練させる必要に駆られている。ある定まった雇用主やオフィス環境に依存せず、いかに少しでも多くの経験値を獲得するか。あちこちを飛び回りながらも、自身の生産性や健康を高い水準で維持し続けるにはどうしたらいいか。いかに経済的あるいは物質・環境的なコストを最小化した暮らしができるか。この美しくも複雑な世界の一員として、考えるべき課題は尽きない。
振り返れば、僕はコロナ禍以来ずっと、こんなふうに世の中のテクノロジーのあり方に「?(クエスチョンマーク)」を突きつけるべく日々を歩んできた。同時に、僕らの暮らしはどうしようもなくテクノロジーによって支えられていることもまた事実であり、だから僕は「NO」とは言わない。10年間ずっと、僕はインターネットが怖い。それでも、それを理解しようと努めないことのほうが、もっと怖い。