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2020-08-21

程よく疎な隅田川の東側で、ものたりない夏を静かに過ごす #オヨライフ

ものたりない、2020年の夏。

一度も遠出をしないままコンクリートジャングルの中でクソ暑い日々をなんとかやり過ごし、惰性で秋を迎えようとしている。

そんな毎日に少しでも変化をつけようと、OYO LIFEを利用して4年間住んだ中野から引っ越したのが4週間前—『軽やかに生きたくて』—2ヶ月間限定のいまの物件での暮らしも、そろそろ折り返し地点になる。

スカイツリーがすぐそこにある生活にも少しずつ慣れてきた。毎朝30分の散歩中、ツリーがどれだけ霞んで見えるかでその日の天気を想像する。周辺にはたくさんの公園・水辺があって、夕方には子どもたちが虫取り網や水鉄砲を持って短い夏休みを全力で楽しんでいる。

skytree

そんな、大通りから少し外れるとすぐに住宅街や緑地というファミリーフレンドリーな環境でありながら、繁華街である錦糸町と閑静な門前仲町・清澄白河といった町たち、そして浅草周辺の非日常的な空間に等しくアクセスできる「ちょうどよさ」もこのエリアの魅力だ。

もっと言えば、歩くのが好きなので銀座や神保町も徒歩圏内。中央線沿いで西は荻窪、東は新宿までが徒歩圏内だった前の家も良かったけれど、多様性・飽きのこなさという点では断然こっちだ。

美術館や博物館も近くて、とても気軽に行くことができる。3週にわたって、北斎美術館、江戸東京博物館、東京都現代美術館を訪れた。展示の充実度は言うまでもなく、静かで冷房のよく効いた館内はまるでオアシス。

mot 東京都現代美術館で開催中の企画展「おさなごころを、きみに」は「デザインあ展」に似た良さがあり大変良かった。

歩き疲れたときにふらっと立ち寄れるカフェも多い。墨田区には「すみだ自家焙煎珈琲店連絡会」なるものが存在するほどで、カフェイン摂取には全く困らない。また、説明不要な神保町のすてきな喫茶店たちをはじめ、銀座・浅草のいかにも観光客ウケしそうな(それでいてキラキラしていない)モダンなコーヒースタンド、ブルーボトルコーヒー上陸で有名になったコーヒーの町・清澄白河と、これまた多彩で飽きさせない。今では、週末の散歩中に見つけたお店で1週間分のコーヒー豆200グラムを買って帰るのがちょっとした楽しみになっている。特にお気に入りで早くも再訪してしまったのは、ご夫婦で週末だけ営業している清澄白河のsunday zooと、エスプレッソに注力している京葉道路沿いのマキネスティコーヒー

お腹が空いたらケバブを食べよう。木場の交差点にあるRoyal Star Kebab Curryはコスパがすごかった。ランチビール(250円)を飲みながら、店内のテレビで流れるバラエティ番組をダラダラと見みつつ山盛りおつまみケバブ(650円)を食べた。二度目はランチタイムとディナータイムの間の午後4時ごろに行った結果、冷房・テレビの切れた灼熱無音の店内でひとり巨大ケバブラップを頬張る運びとなった。

kebab

ちょうどいいのは地図上の話だけではない。人との距離感にもまた独特の「ちょうどよさ」がある。まずなにより、どこへ行っても人が少ない(中野区周辺比1)。三密回避を通り越して、もはや疎である。

そしてそんな身体的距離に関係してか、住む人やお店の方々とのコミュニケーションも、馴れ馴れしすぎず、よそよそしすぎず、ちょうどいい。早朝に下町エリアを散歩していると「おはようございまーす」と挨拶を交わすことがある。地方ならまだしも、東京でこんな経験は初めてだ。さらに、ふらっと立ち寄ったカフェを営むご夫婦は、帰り際に「暑いから気をつけてねぇ」なんて声をかけてくれる。そしてどこか素っ気ないケバブ屋の店員は、灼熱の店内で汗を拭う僕に無言で一杯のラッシーを差し出してくれた。

同じ東京でも、まだまだこんなに新しい体験ができる—その事実がとにかく嬉しい、東京再発見の日々である。

もちろんこれは4週間という限られた期間で僕が“たまたま”経験したことに過ぎず、中央線沿い、あるいは隅田川の東側に住むことの一般的な利点・欠点を示すものではない。しかしこれこそが、OYO LIFEによって得られた心の軽さに起因するポジティブなバイアスなのだと思う。

物は考えようだ。そんなふうに新しいレンズを通して現状を見つめ直すと、ものたりない夏も案外悪くないように思えてくるわけで。

たとえば、これまで都内で不定期に会っていた友人とは、最近はむしろ以前よりも頻繁に会えている。これはとても良いこと。お互いに出張や帰省、他のグループとの飲み会といった予定に左右されなくなったことが理由、だと思う。

また、地元の家族や遠方の友人とは、直接会えない分LINEなどでのやり取りが増えた。その結果、むしろ精神的距離は以前よりもずっと縮まった気がする。お盆に1週間も帰省すると後半はいろいろと煩わしくなってしまうのが常だったけれど、今年はその心配もない。ビデオ通話を覚えた母は無敵で、先日はリモート墓参り&リモート送り火が執り行われた。

今年の夏は、たしかにどこかものたりない。

しかし、ものたりない夏がもたらした「新しさ」も同時に存在していて、それは決してネガティブなことばかりではないのだと思う。

「こういう夏だって、いいじゃない。」軽やかな生活には、そう思わせてくれるだけの魅力ある。

1. 住む街として完璧に設計された中央線沿いは、ここ数カ月間みんながStay Localを真面目に実践した結果、駅前を中心に異常な過密さになっていた気がする。

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最終更新日: 2022-01-18

  書いた人: たくち

Takuya Kitazawaたくち)です。長野県出身、カナダ・バンクーバー在住のソフトウェアエンジニア。これまでB2B/B2Cの各領域で、Web技術・データサイエンス・機械学習のプロダクト化および顧客への導入支援・コンサルティング、そして関連分野の啓蒙活動に携わってきました。現在は主に北米(カナダ)、アジア(日本)、アフリカ(マラウイ)の個人および企業を対象にフリーランスとして活動中。詳しい経歴はレジュメ を参照ください。いろいろなまちを走って、時に自然と戯れながら、その時間その場所の「日常」を生きています。ご意見・ご感想およびお仕事のご相談は [email protected] まで。

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