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2020-12-08

プロダクトマネジメントとコンサル、その交差点。

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先日、僭越ながら『機械学習エンジニアのキャリアパス。プロダクトマネージャーという選択肢が拓く可能性』という記事を執筆する機会をいただきました。

ここ数年間で僕が経験的に学んだこと、それはこの仕事における「差異を尊重すること」「期待値をコントロールすること」「顧客中心であること」の重要性。これは記事の中でも述べている通り。

さて、それとは別で最近『コンサル一年目が学ぶこと』を読んだ。(Prime Readingで無料)

—なるほど、どうやら僕は概ね“正しい”経験を積んできたようだ。

そこには「仕事」という広い文脈の中で、プロダクトマネジメントとコンサルに共通する、いくつかの重要な点が記されていた。

違うところはそのままに

では具体的にはどうするか。

曰く、「事実」と「意見」を混同せず、ロジックとファクトのみで極限まで合理的なコミュニケーションを行う。

違うところ、理解できないところは、合わせるのではなく、そのままにしておく。(中略)全員が納得のいくローコンテクストなルールや基準だけを掲げて、論理と数字でコミュニケーションをする。(『コンサル一年目が学ぶこと』第1章 コンサル流話す技術)

たしかに、人間とは不合理な行動・判断をする生き物であり、その不合理さは「コンテクスト」によってもたらされる。その点は『データよりもストーリーを、相関よりも因果を。』でも書いた通りであり、ならば内容をとことんローコンテクストなものにしてしまえばよい。

僕らの行動・選択は認知科学で言うところの記憶や経験、そして行動経済学においてはヒューリスティクスや損失回避の本能として説明されるものの存在に大いに依存する。

この言語化することのできない、過去の記憶や経験と目の前の事象が結びついた今この瞬間の状態こそが「コンテクスト」であり、僕らはそれを都合よく受け取り、解釈し、不安(直感的損失)が少ないものを正として判断を下す。

先の記事で意図的に強調したのは、この特性をうまく利用するとプロダクト/サービス開発において絶大なインパクトをもたらすということ。全体をみて「そこそこ」の最大公約数的な解を提示するよりも、不合理さを受け入れて個 (N=1) に徹底的にフォーカスした解を示すことの意義、それは『ジョブ理論』や『実践 顧客起点マーケティング』でも語られている通り。

しかし、しかしである。

議論の中で何らかの「違い」が問題になった場合、そのプロジェクトはある種の「多様性」を孕んでいるわけで。僕らはこの時点で、ここから先は「ストーリー」だけで手に負える問題ではない、と気がつく必要がある。

「データ」が大数の法則に基づいて「事実」を示すのに対し、「ストーリー」はN=1の「意見」にすぎないこともある。この点をゆめゆめ忘れないこと。後者をアイディア出しに用いながらも、前者で着実に検証を行う。両者を正しく使い分けてこそ、である。

感情や熱意で押していくことは、ベテランになってからでも間に合う。(第1章 コンサル流話す技術)

何はなくとも期待値の把握

顧客にとって、どれだけ開発に時間をかけたとか、どれだけ複雑な技術・アルゴリズムを応用したとか、そんなことはハッキリ言ってどうでもよい。求められる解を最短で、最高の質で提供することこそがこちらの使命であり、「何を求められているのか」の理解なくして前に進むことはできない。

見当違いのモノを提供したところで「そんなものは頼んでいない」と言われておしまいであり、「そちらの要求は八割方満足しました」では時間稼ぎ・中間報告以上のものにはなりえない。これでは誰も幸せになれない。

だからこそファーストコンタクトで期待値をすり合わせることが、顧客のため、ひいては自分たちのために、何よりも重要なのだ。

とはいえ、保守的にすべて「できません」「難しいです」と言っていては交渉決裂だし、いい印象を与えようとなんでも「できます!」といって期待値を引き上げるのも悪手である。

まずは先入観抜きで相手の期待値を素直に推し量ること。そのうえで、対話を通してその期待値を現実的なところにコントロールする。

エンジニアやデザイナーが手を動かして最高のモノを創ってくれる傍らで、プロダクトマネージャーには何ができる?彼ら彼女らが創り上げたモノの価値を最大化することが使命であるならば、まずは泥臭く、コミュニケーションを惜しまないことだ。その点において、僕らはコンサルの仕事から学ぶべきことが多分にある。

すべての仕事には、なんらかの相手が存在します。その相手の期待値を把握して、それに常に応えて、ときに上回るようにしていくこと。(第1章 コンサル流話す技術)

ユーザ・顧客の声に耳を傾ける。いや、全力でそれを信じる

コンサルの仕事をみていると、クライアントに対する圧倒的なコミットメントに驚かされる。

クライアントと約束したものは、どんなことがあろうとも、やってくる。 そこに信じられないほど強いコミットメントをもっている。 そして、常にクライアントの期待値を上回るものをもっていく。それを実直に繰り返すことによって、信頼を得る。 ──これがコンサルタントの仕事術のほぼすべてだと言ってもいいでしょう。(第4章 プロフェッショナル・ビジネスマインド)

プロダクト開発における「クライアント」とは、そのプロダクトのユーザ・顧客となる人たちである。そして、最終的に僕らの仕事を受け取り、評価を下すのは他でもないユーザ自身。どれほど賢い人たちが知恵を絞って綿密な計画の下に開発したプロダクトであっても、ユーザに受け入れられなければそれまでだ。

であれば、彼ら彼女らの声を聞かずして、一体誰が成果に対してコミットできようか。

違いを尊重しながらもプロジェクトを着実に前に進めることや、対話を通して期待値を推し量りコントロールすることも、究極的には「顧客のため」を貫くための手段にすぎない。

それが趣味や自己満足以上の何かであるのなら、まずは受け手の声に耳を傾けよう。お金と時間を費やして「無」を生み出していたのだとすれば、それは大変虚しいものである。

コンサルの凄さ

非コンサルである自分が経験的に学んできたことが『コンサル一年目が学ぶこと』で大変うまく言語化されており、その多くはプロダクトマネジメントにも応用可能なものであった。

クライアントへのコミットメントの弱さ、ミスコミュニケーションに起因する期待値のズレ、「お作法」の違う異国、異業種の案件での失敗。どれも社会人になってから最初の三年間で体験したことばかりで耳が痛い。

それを一年目で叩き込まれて実践しているコンサル各位はとても尊敬する。

その極意は「コミュニケーションを徹底すること」、この一点に集約されるのだと思う。延々と画面と睨めっこをしていても、どれだけ社内で議論を積み重ねても、そこに答えはない。頭の外で「考える」力。仕事における「コミュ力」とは、そういうものなのだろう。

  書いた人: たくち

たくちです。トレジャーデータでデータサイエンス・機械学習のプロダクト化および顧客への導入支援・コンサルティング、そして関連分野のエバンジェリズムを担っています。趣味は旅行、マラソン、登山。コーヒーとお酒とハンバーガーが好き。長野県出身。ブログへのご意見・ご感想、お仕事のご依頼など、@takuti または [email protected] までいつでもお気軽にご連絡ください。

※当サイト上での発言は個人の見解です

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