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2021-01-04

顧客起点マーケティングによって「データ」が「ストーリー」に昇華される

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改めて『実践 顧客起点マーケティング』を読むと、その贅沢かつ的を得た内容に驚かされる。

筆者のロクシタンやSmartNewsでの経験を惜しみなく紹介しながら、マーケティングにおけるN=1(たった一人の顧客)にフォーカスした分析の重要性を説く本書。

データよりもストーリーを、相関よりも因果を。』で学んだこと、それは全体をみて「そこそこ」の最大公約数的な解を提示するよりも、不合理さを受け入れて個 (N=1) に徹底的にフォーカスした解を示すことの意義。これはまさに顧客起点マーケティングの目指す「それ」である。

顧客中心で泥臭く動き回り、抽象的な「ベルソナ」の向こう側にある「生の声」を聞くことで真に望まれる解を示す。それこそが自社製品・ブランドの積極的選択を顧客に促すためにとるべき“戦略”である。

しかしそこには同時に、その戦略をスケールする際に生じる「コモディティ化への回帰」のジレンマや、たった一人の声の不確かさに対する不安がつきまとっていた。

D2C企業の抱える課題として、コモディティ化への回帰が挙げられている。ある程度成長したD2C企業は、ビジネスをスケールさせるべく、結局最後は従来のマスアプローチを取らざるを得なくなるというジレンマ。(中略)問題は、語りかけをどこまで徹底して深く実践できるかだろう。

データよりもストーリーを、相関よりも因果を。

「データ」が大数の法則に基づいて「事実」を示すのに対し、「ストーリー」はN=1の「意見」にすぎないこともある。この点をゆめゆめ忘れないこと。後者をアイディア出しに用いながらも、前者で着実に検証を行う。両者を正しく使い分けてこそ、である。

プロダクトマネジメントとコンサル、その交差点。

この点、『実践 顧客起点マーケティング』で語られるデータありきの顧客起点の方法論は、先の議論で抜け落ちていた「データ」と「ストーリー」をつなぐ具体的なプロセスについて補完するものである。

顧客中心であるときの「顧客」、それは無作為に抽出されたテキトーな「誰か」であってはならない。まずはじめに「データ」から顧客のセグメント分析を行い、顧客層を俯瞰して見る。そのうえで、各セグメントから合理的にN=1を絞り込む。そこからは大胆に、その一人を深く理解することに努め、彼・彼女の声から施策を練って、それを「ストーリー」へと昇華させてゆく。

「データ」ばかりを見て顧客の声に耳を傾けないことは論外であるが、だからといって「ストーリー」という大義名分を振りかざして勝ち続けることのできない製品・施策を量産しても、行き着く先は「コモディティ化への回帰」に他ならない。

独自性が弱いと、コモディティ競争に陥ってしまうのです。(1-1 マーケティング「アイデア」とは何か—四象限で定義するアイデア『実践 顧客起点マーケティング』)

もうひとつ、本書における重要な主張は「強固なプロダクトアイデアありきのマーケティングである」というもの。コミュニケーションアイデアのみに固執した「バズる」だけのマーケティング施策の儚さは想像に難くない。プロダクトアイデアの独自性を前面に押し出して顧客に積極的選択を促すことが肝心であり、N=1分析はそこに向けて自社製品の強み・弱みを浮き彫りにするためのツールでもある。

すると、「データ」から出発して「ストーリー」に着地するまでのフローはこうだ。

「データ」・・・(セグメント → N=1)分析 ↔ プロダクト → コミュニケーション ・・・「ストーリー」

あとはこれを反復すること、それに尽きる。

ここで、分析とプロダクトが双方向に接続されていることを強調したい。分析の結果明らかになった事実から、全く新しいプロダクトアイデアが生まれることもある。顧客起点マーケティングとは、顧客起点プロダクト開発の延長線上にある考え方であると言っても過言ではないだろう。

面白かったのは、SmartNewsへの転職に際して著者が独自で簡単なセグメント分析・N=1分析を行い、事前にニュースアプリ市場のポテンシャルを評価したという話。このように重要な選択を迫られたり困難に直面したときなど、実生活の中でも『顧客起点マーケティング』の考え方を応用できる場面が数多く存在しそうだ。

難しく思えていた問題の答えは、案外すぐ目の前の“あの人” (N=1) が持っているかもしれない。

  書いた人: たくち

たくちです。トレジャーデータでデータサイエンス・機械学習のプロダクト化および顧客への導入支援・コンサルティング、そして関連分野のエバンジェリズムを担っています。趣味は旅行、マラソン、登山。コーヒーとお酒とハンバーガーが好き。長野県出身。ブログへのご意見・ご感想、お仕事のご依頼など、@takuti または [email protected] までいつでもお気軽にご連絡ください。

※当サイト上での発言は個人の見解です

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