昨年2月にはじめてIELTS (Paper-based, Academic) を受験した:TOEFL受験期の遠い記憶、一体どこまでIELTSに通用するか?
前回はTOEFL iBTとの比較のため、そして移住よりも留学に対する気持ちが強かったためにAcademicモジュールを受験したが、あれから一年、この度カナダへの移住が決定した。というわけで、ビザ(労働許可)申請に英語のスコアは不要だったけれど、渡航前にお試しでGeneral Trainingモジュールを受験してみた。
結果は次の通りで、いずれのセクションも試験直後の手応え+0.5点な印象。
TOEFLやIELTS Academicとは大きく異なるので単純比較はできないが、これまでのスコアを並べたものが以下:
Reading | Listening | Writing | Speaking | Total | |
---|---|---|---|---|---|
TOEFL iBT(2014年10月;自己ベスト) | 20 | 25 | 24 | 23 | 92 |
TOEFL iBT → IELTS Academic換算(推定スコア) | 6.5 | 7.0 | 6.5 | 7.0 | 6.5 |
IELTS Academic(2020年2月) | 7.5 | 8.0 | 6.0 | 7.0 | 7.0 |
IELTS General Training(2021年2月) | 8.5 | 7.5 | 6.5 | 7.5 | 7.5 |
なお、過去一年間で対策らしい対策は一切していないので、AcademicとGeneral Trainingのスコアは「両方受けたらどうなるか」の素直な指標として読み取っていただいて問題ない。前日にテストフォーマットをおさらいし、はじめてのComputer-delivered IELTSだったので『紙よりいい?パソコンで受験できるIELTSを受けた感想【Computer-delivererd IELTS in 東京】』などで当日の流れの確認だけを行った。
Academic vs. General Training
まずは試験タイプ(モジュール)の違いについて。
Academicモジュール
- 留学用。英語を母語としない者が海外の大学院に出願する際に必要。
- アカデミック英語の指標として、TOEFLと比較されることが多い。
- 問題文には多様な分野(心理学、天文学、植物学など)の専門的な講義内容・記述が含まれており難解。
- (ある講師いわく)テスト方式・内容の信頼性などの観点から、近年では特にヨーロッパを中心に「TOEFLよりもIELTS」の風潮が強い。
- Writing第一問:与えられた図・グラフを英語で説明する。
- Speakingでは、パーソナルな質問(「仕事何してるの?」など)から始まり、最後には「宇宙に興味ある?」という問いかけに答える形で、少し難しい内容を話した。(この「宇宙」という話題がAcademic特有のものであるかは定かではない。)
General Trainingモジュール
- ビザ申請・移住用。カナダやオーストラリアなど英語が第一言語の国に住む時に、手続きの過程で提出が要求されることがある。
- 日常英語に焦点を置いているので、Academicよりも格段に取り組みやすい。
- Writing第一問:メールを書く。
- Speakingの内容はパーソナルな事柄や一般的な話題(「余暇をどうやって過ごすか?」など)ばかり。
Speaking, Writingに関しては、AcademicもGeneral Trainingも、試験終了直後の手応えはほぼ同じだった。それでもスコアには各0.5の差がでたので、採点基準は全くの別物だと考えたほうがよさそうだ。
Paper-based vs. Computer-delivered
次に試験方式の違いで、紙と鉛筆で受けるか、コンピュータ上で受けるか。
「受験スケジュールの調整のしやすさ」という点ではComputer-delivered IELTSに軍配が上がる。
Paper-based
- W, R, L → S(1-dayの場合は午後、2-dayの場合は別日;英検主催の2-dayでは二日目実施が主)
- Speakingの開始時間は選べない。同日の午後遅くに割り当てられると、長い待機時間が発生することも。
- 試験3週間前には申し込みが締め切られる。
- Listeningはスピーカー、Writingは筆記。
- Listeningで問題用紙(メモ)から解答用紙に転写する時間がある。
- 結果が出るまで2週間程度。
Computer-delivered
- S → L, R, W(少なくともBritish Council Japan主催の場合;IELTS一般には、SpeakingがLRWの直後に来る場合もあるとのこと)
- Speakingの開始時間が申し込み時に選択可。自分は、Listening開始の直前で申し込んで待機時間を最小化することができた。
- (空席があれば)試験の数日前まで申し込みが可能。
- Listeningはヘッドホン、Writingはキーボードタイピング。
- (メモはとれるが)Listeningでのメモ転写・回答用の余白時間が無い。
- 結果が出るまで数日(1週間未満)。
「回答のしやすさ」「得点のしやすさ」という点では一長一短で、個人的には全セクションを終えたときにあまり大きな差は感じなかった。
セクション | 次に受けるなら? | 理由 |
---|---|---|
Listening | Paper | 基本的に「落ち着いて聞けば分かる」問題が多かったので、メモ取りに集中→そのあと転写、のほうが安心。回答が怪しい設問があっても「転写時に考え直そう」とすぐに切り替えられる。Computer-deliveredだと聞いたら即回答なので忙しく、過ぎた問題に引きずられたら終了。 |
Reading | どちらでも | IELTSリーディングは「上から下に素直に読んでいけば回答は自明」なケースが多い印象。TOEFLはパラグラフ間を何度も行ったり来たりする必要があり、「PC上でこの複雑な長文を読むのは疲れるな…」とお手上げだったけれど、今回のComputer-deliveredは全く苦ではなかった。Paper-based Academicでも問題用紙へのメモ・書き込みはほとんどしなかったので、正直どちらでも。 |
Writing | Computer | 現在のワード数が常に表示され、カット&ペースト(文の前後移動)ができるのが何よりも心強い。Paper-basedではペンだこができてしまったし、初受験で文量の感覚もつかめず、ワード数を数えるだけで余計な時間を費やした。ただし、ストレスなく回答できる分、“書きすぎ”やタイプミスには注意。今回は要求ワード数を遥かに上回る文量を書いてしまって、時間配分もグダグダだった。タイプミスも大量にあったに違いない。ミス1つごとに確実に減点されるので、慎重に、必要な分だけを精確に入力しましょう。 |
Speaking | どちらでも | いずれも試験官との対面なので変わらない。強いて言えば、試験開始時間が事前に選べてコンディション調整がしやすいComputerか1。 |
Computer-deliveredのもうひとつのメリットとして、一日程あたりの受験者の少なさが挙げられる。そもそも試験会場一部屋のPCの台数には限りがあるし、試験日の候補が多いので受験者が分散しやすい。これはコロナ禍では大変嬉しいもので、自分が受けた日は他の受験者は2人しかいなかった(いずれもAcademic)。
なお、TOEFLにも両方式 (Paper-based, PBT vs. Internet-based, iBT) が存在するが、IELTSと異なりPaper-based TOEFLはその有効性に限りがある2。
英検主催 vs. British Council主催
最後に、昨年受験したPaper-based/Academicは英検主催、今回のComputer-delivered/General TrainingはBritish Council主催という違いがあったので、その点にも触れておく。テスト内容や結果の有効性は同じはずだが、登録方法、受験地、開催頻度などは異なるので自分にあったほうを選ぶこと。
英検主催
- Paper-basedが主。試験日程、開催地が豊富。
- 昨年からComputer-deliveredも実施しているが、現時点ではAcademicモジュールのみの対応で、General Trainingの場合は引き続き紙で受験する必要がある。
- 当日のスタッフはほぼ日本人で、受付・写真撮影など試験時間外の案内は日本語・英語の両対応。
British Council主催
- Computer-delivered(またはイギリスビザ申請用IELTS)のみ対応。試験会場が大都市に限られている。
- Computer-deliveredは両モジュールに対応していて、開催頻度もかなり高い。
- 当日のスタッフとのコミュニケーションは受付・写真撮影含め最初から最後まで英語のみ。
同日に受験していた他の方が、試験開始前の英語での説明(「指示があるまで開始しないでください」など)を聞き逃して注意されていた。British Councilのスタッフの方は英語が大変流暢なので、この段階である程度の英語力が要求される。不安な人は事前に試験対策をしておくと安心。
以上、お試しIELTS受験記3第二弾でした。
1. 非母語を話すことは少なからず頭の中のリソースを割く「仕事」なわけで、集中力を高めたり、食事のタイミングを調整したり、事前に少し英語に触れておいたり、スイッチを入れるためにできることは多くある。 ↩
2. 試験項目にSpeakingが含まれず、あくまで「参考程度」の英語力をはかるもの。ビザ申請など、非アカデミアの場面で一部PBTのスコアが利用可能なケースがあるかもしれないが、大学の出願条件ではTOEFL "iBT"と明示されているのが基本。 ↩
3. すぐにスコアを第三者機関に提出する予定は無い、という意味で。 ↩
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最終更新日: 2022-01-18
書いた人: たくち
Takuya Kitazawa(たくち)です。長野県出身、カナダ・バンクーバー在住のソフトウェアエンジニア。これまでB2B/B2Cの各領域で、Web技術・データサイエンス・機械学習のプロダクト化および顧客への導入支援・コンサルティング、そして関連分野の啓蒙活動に携わってきました。現在は主に北米(カナダ)、アジア(日本)、アフリカ(マラウイ)の個人および企業を対象にフリーランスとして活動中。詳しい経歴はレジュメ を参照ください。いろいろなまちを走って、時に自然と戯れながら、その時間その場所の「日常」を生きています。ご意見・ご感想およびお仕事のご相談は [email protected] まで。
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