2021年2月26日現在の情報です。最新の情報は必ずカナダ政府の "COVID-19: Travel, quarantine and borders" を確認してください。
現地時間2月22日(月)からカナダ政府による新たな入国規制が施行された。『トレジャーデータ株式会社を退職して Treasure Data (Canada) に入社しました』のために、そのわずか4日後に入国をするというレアな経験ができたので、情報が新鮮なうちにまとめておく。繰り返しになるが、状況は日々変わっているので最新情報は必ず公式で確認してほしい。
まず、これまでの規制と合わせて、2月22日以降カナダに入国可能な人たちに課されている主な制約は次の通り(太字が新ルール):
- 公式アプリ ArriveCAN をインストールの上、「隔離期間中の滞在先」および「滞在中に確実に連絡がつく電話番号」を事前申告
- カナダ行きフライトの出発予定時刻の前、72時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書の提示
- 入国後14日間の自主隔離義務
- ArriveCAN上で14日間、毎日の健康報告
- 入国後PCR検査を受ける
- リンク先から事前登録ができる。義務ではないが、空港でQRコードを読み取ってその場でスマホから入力することになるので、事前にやっておいたほうが楽。
- 先の検査結果が確認されるまで、14日間の隔離期間うち最初の3日間は政府認定のホテルに滞在
- 政府認定ホテルの宿泊費は自腹(食事は込み)
- 入国時に自宅でできるPCR検査キットを受け取り、隔離10日目に検体採取・回収に来てもらう→これで陰性なら隔離期間終了の後に無事解放される
入国後の流れについては、入国時に渡されたこのチラシがよくまとまっていて何度も参照した1。
この新しいルールだが、公式アナウンスから1ヶ月も経たないうちに見切り発車的に施行されたとあって、カナダ国民含め多くの入国者が混乱の渦中にある。ニュースでもそのガバガバっぷりが連日報道されている有様:
- ‘It’s inconvenient and very expensive’: 5 Vancouver hotels approved for government quarantine
- Travellers booking COVID-19 quarantine hotels report long wait times, lack of options
- トロントは相当カオスな状況らしい。食事の提供が正しくされないホテルもあり、腹を空かせた宿泊客(=要隔離者)がロビーに押し寄せたとのこと。(そんなことある・・・?)
政府認定ホテルの予約が特に地獄で、僕の体験は次の通り:
- なぜか電話予約しか受け付けておらず、サイトに「回線混雑のため、フライトまで48時間以内の人だけ予約に進んでください」との記載があったので直前まで待った。
- 今はいくつかのホテルでWeb予約も受け付けるようになったらしい。
- Toll-free(フリーダイヤル)の窓口があるので、Skypeからかけてオペレーターが出るまで待機。
- 3時間後、ようやくオペレーターに繋がる。電話窓口の営業時間が東海岸時間なので、このとき既に日本は深夜2時。
- 「2月26日のチェックインなんですが」と伝えると "Wow, it's soon..."(「急やなオイ」)と言われる。いや、48時間以内になってから予約しろって書いてあったじゃん…。
- なので、真面目に待たず、フライト日程が決まっている人は早めに予約してしまえばいいと思う。※ただし予約するとキャンセル・返金不可なので注意
- さらにサイト記載のホテルから希望を伝えると「そのホテルはさっき売り切れました」と言われる。次点を伝えると「それも今朝売り切れました」と。「じゃあどこなら空いてるの!」と言うと、なぜかサイトに記載されていない他のホテルを案内される。
- ホテルのリストは随時更新中とのこと。先の知見と矛盾するが、もう少し安いホテルが追加される可能性もあるので、待てるならもうしばらく待つのも手。
- クレジットカード番号や名前、メールアドレスをすべて電話口で伝えるという罰ゲーム。
- 最終的に予約することができたホテル、衝撃の一泊5万円。
- 先のニュース記事いわく、これが(少なくとも僕が予約した時点での)標準価格らしい。
(フライトがあと1週間早ければこんな苦労をせずに済んだのに…と思う一方で、このドタバタ感を楽しんでいる自分もいる。オペレーターに誕生日を伝えたら「(東海岸時間で)明日じゃん!おめでとう!それにしても若いわね、ウチの娘と同い年だわ」などと絡まれたのも効いている。)
以下、2月26日(金)発のNH116便で日本からバンクーバーに渡航して現在隔離4日目の僕のケースをもう少し詳しく。
フライト1週間前から
- 諸々の手続きや荷物の整理が必要だったので地元(長野)に戻っていたが、実家には寝泊まりせず駅前のホテルに滞在。
- 接客業や営業職がいる家なので、往来と接触は極力減らして、72時間前PCR検査に向けて万全を期す。
- 2月23日(フライト3日前)に東京へ移動し、引き続きホテル滞在。
2月24日 (Day -2)
- クリニックフォア大手町にてPCR検査を受ける。
- 『カナダへ渡航のための新型コロナPCR検査についてご説明します』の記述が詳細で信頼できたため。
- あと実は秋頃、COCOAで接触通知が来た時に話の種にと同院で保険適用PCR検査を受けていて、診察券を持っていたため。
- 10時ごろ検査を受けたので、当日18時には陰性証明書を入手。
- 検査を終えても入国後PCR検査が控えているので安心できない。証明書受け取りまでの時間の使い方は慎重に。
- 僕はComputer-delivered IELTSを受験。受験者が非常に少ないので密になりようもなく、下手にカフェで時間潰すよりもずっと安全。
- 夜、政府認定ホテルの予約をする。その結果は先述の通り。
2月25日 (Day -1)
誕生日なのに暇すぎる、ということで(翌日の空港アクセスも良好な)ちょっといいホテルに泊まる。それだけの1日。
2月26日 出国 (Day 0)
- ANA国際線チェックインカウンターの営業時間に注意。数少ない国際線は夜間に集中しており、カウンターはその出発時間の2時間30分前からしか空いていない。
- チェックイン時に陰性証明書とビザ関連書類(観光旅行などではないことの証明)を見せた。
- ラウンジではスタッフが席まで案内してくれて、密にならないよう配慮されていた。
2月26日 入国 (Day 1)
- 飛行機から降りてしばらく歩くと、案内の人に「ホテルは予約済み?PCR検査は?」と尋ねられる。PCR検査の事前登録の存在は知らなかったので、その場でQRコードを読み取って登録。空港WiFiは快適。
- キオスク→入国審査。ここで改めて陰性証明書とビザ関連書類を提出。
- ビザの受け取りが必要な場合、Immigration Officeの入り口に注意。荷物受け取りの前後2箇所に入り口があるらしく、入国審査官に指示された方向に歩いたら閉まっていた。客もスタッフも少ない状況なので、動線は正直よくわからないです。素直に人に聞きましょう。
- PCR検査はこれら全てを終えて税関を抜けたあと。流れとしては次の通りで、過剰なほど親切に案内されるので迷うことは一切ない。
- パスポートと先の登録済情報を元に、受付票を作成してもらう。
- 受付票を持って検査エリアへ。ブース内で検体を採取してもらう。両方の鼻、それぞれ各15秒ぐるぐる。
- 終わったら指示された方向に歩いて、隔離10日目の自宅検査用のキットを受け取る。「箱を開ければ分かるから!何か分からないことがあったら箱の裏のメールアドレスまで」とだけ言われ、説明一切なし。
- そのまま歩くと、政府認定ホテルまでのシャトルバス待合スペースがある。(基本的には定期運行しているようだが)ホテルと電話番号の一覧が映った画面があるので、自分でホテルに電話をかけろと促される。ArriveCANを登録しているので当然この時点で通話可能な状態にあるべきなのだが、もしものときは待合スペースに固定電話もある。
- 電話をしてそのまま待っていれば、シャトルバス到着のタイミングでスタッフが案内してくれる。
- ホテルチェックインは至って普通。部屋までも普通にエレベーターで移動するので、いかにもな『隔離』という感じではない。
https://twitter.com/takuti/status/1366252013831352321
2月27日〜3月1日 (Day 2-4)
- 翌日にはPCR検査の結果がメールで届く。このとき事前登録で設定したパスワードが必要なので忘れないこと。
- ルール上は陰性と分かれば(ArriveCANで申請した)自主隔離場所に移動してしまってもいいはずだが、政府認定ホテルの代金は返金されないので3日間おとなしくするのが吉。
- 僕が利用した政府認定ホテル (Four Points by Sheraton YVR) の食事はかなり良かった。
https://twitter.com/takuti/status/1366254160383860739
残りの自主隔離期間
政府認定ホテルをチェックアウトして、今日から残りの11日間はHilton Vancouver Airportで自主隔離を継続する。
予約にあたり、ビザJPカナダの『ヒルトンホテルでの隔離滞在プラン』という割引プランを利用した。Airbnbや格安ホテルなどと比較すると値は張るが2、この2週間普通に仕事もするし、生活必需品の調達などで余計なストレスを感じなくても済むように。特にホテルの場合、部屋から一歩も出られずフロントに頻繁に電話をかけることになるので、事前にホテル側が「この客は自主隔離中である」ということを理解してくれて、それに対する用意があることが大切。
プランに食事は含まれないが、日本から2週間くらいは何とかなりそうな量の食料を持ち込んだので問題ない3。また、出国直前に職場で防災用非常食の無料配布キャンペーンが行われたので、そこで貰ったものも持ってきた。
「自己隔離中の食事プラン」おいしい日本食を滞在先までデリバリーします!(別料金)も用意されているが、内容が選べないとのこと。それだとPFCバランスがバグってしまうので、今回は遠慮した。なお、ヒルトンゴールド会員の朝食無料特典の互換で、朝食だけ(インルームダイニングで)ホテル側で無料対応してくれるらしい。ありがたい。
このヒルトンには渡航前から大変お世話になっている。1ヶ月前に14日間の自主隔離予定で予約をいれてから、メールでいろいろな質問に答えていただき、更に、新しい渡航規制がアナウンスされてからは、ホテル協会から得た最新の情報を共有してくれた。また、(ヒルトンが政府認定ホテルに選ばれなかったため)14泊→11泊への予約の修正に柔軟に対応してくれたり、政府認定ホテル〜ヒルトンまでの移動のタクシー代を負担してくれたりと、とにかくホスピタリティがすごい。そして今日チェックインの時に、ずっとメールでやり取りをしていた担当者が直接出迎えてくれて、なんかもう感動してしまった。
ここで11日間なら、喜んで隔離されます。WiFiも250Mbps(fast.com値)で "High-speed WiFi" に嘘偽りなし。
1. 余談だが、ArriveCANといい、接触確認アプリ(日本のCOCOA相当)といい、公式から出ている情報ソースがやたら見やすい。よほど良いデザイナーを雇っているものと想像する。 ↩
2. それでも眺望最高の17階ジュニアスイートルームで一泊約1万2千円って・・・あの5万円は何だったんだ(しかもすごくフツーの部屋だった)。 ↩
3. イレギュラーな状況下でドタバタしていて見落としがちだけど、カナダに持込可能なモノは改めて確認しておこう。当初ホエイプロテインを持っていく予定だったが、パッキングし終えたところで "These items are not allowed: milk, milk products (whey, cream, skim milk, butter oil, and so on)" の記述に気付いた。危ない危ない。 ↩この記事に関連する話題: ソフトウェアエンジニア、カナダに渡る。
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最終更新日: 2022-09-02
書いた人: たくち
Takuya Kitazawa(たくち)です。長野県出身、カナダ・バンクーバー在住のソフトウェアエンジニア。これまでB2B/B2Cの各領域で、Web技術・データサイエンス・機械学習のプロダクト化および顧客への導入支援・コンサルティング、そして関連分野の啓蒙活動に携わってきました。現在は主に北米(カナダ)、アジア(日本)、アフリカ(マラウイ)の個人および企業を対象にフリーランスとして活動中。詳しい経歴はレジュメ を参照ください。いろいろなまちを走って、時に自然と戯れながら、その時間その場所の「日常」を生きています。ご意見・ご感想およびお仕事のご相談は [email protected] まで。
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